月別アーカイブ: 2017年4月

AWSのセキュリティ強化機能およびJAWSのセキュリティ部会の活動 ~ 第6回クラウド利用者会議

第6回クラウド利用者会議 レポート

2017年4月27日
CSAジャパン 諸角昌宏

第6回クラウド利用者会議では、トレンドマイクロ株式会社の南原正樹氏に講演していただいた。会議は、4月17日(月)に開催し、クラウド利用者を中心として15名に参加いただいた。

今回は、AWSのセキュリティ強化機能およびJAWSのセキュリティ部会の活動について講演していただくとともに議論を行った。

南原氏から、まず、AWSのセキュリティ強化機能について説明していただいた。AWSでは、セキュリティを以下の3つの範囲に分類している。

  • AWSが責任を持つ範囲
    AWSでは、物理、論理(ハイパバイザ、ゲストOS)、また、ネットワーク(DDoS,中間者攻撃、なりすまし、盗聴、ポートスキャン等に対応)に対するセキュリティを提供している。また、法律や規則への対応、ログ管理なども提供している。
  • AWS以外のサービスを利用する範囲
    これは、IR, Forensics,セキュリティ診断、AV, IPS/IDS, WAFなどで、他社が提供している製品やソリューションを使用するケースである。
  • AWS機能を使用してユーザがセキュリティを保つ範囲
    これは、AWSが提供しているアクセス管理、暗号化WAF, DDoS対応などである。また、AWSの各セキュリティのサービスにはAPIも提供され、そのAPIを通じたセキュリティ対策を行えるようになっている。

AWSでは、ユーザからのフィードバックおよび要求に基づいて、セキュリティ機能を提供することを進めている。以前のクラウド利用者会議でも触れられていた「セキュリティをソフトウエアで解決する」ということに着実に向かっているようである。
また、AWSの提供するセキュリティ機能は、機能は提供しているが設定等は独自に行うことが必要なようである。たとえば、WAFを提供しているが、ルールの作成&カスタマイズを行わないと、そのまま使いづらい側面がある。

次に、南原氏よりJAWSユーザグループの説明が行われた。JAWSユーザグループは、基本的にコミュニティ活動であり、どのようにしてファンを増やしていくかということに貢献していくとのことである。その中で、Security-JAWSでは、講師を招いての勉強会を基本的に4半期に1回開催するようにしており、今までに4回開催している。また、過去の取り組みの中では、海外のAWSの講師をお招きして、Encryptionの話をしていただいた。 「みんなで勉強していこう」という考えの下に、AWSのサービスを深堀できるように、集まって情報交換を行っている。

さて、南原氏の説明の後、いつものように参加者によるディスカッションが行われた。

まず、AWSにおける法規制の扱いについて議論が行われた。ちょうど、4月7日に「AWSのリセラーとの契約において、準拠法を日本法、管轄裁判所を東京地方裁判所への変更を可能とした」というニュースもあり、この考え方について参加者より説明が行われた。これは、AWSは、準拠法として米国の管轄裁判所でおこなっていたが、今後は契約法に基づき管轄裁判所は所定の場所(日本でも可能)でできることになるとのことである。ただし、契約法であるため、誰がAWSにアカウントを持っているか(リセラー、カスタマ)によるようである。SIerがアカウントを持つ場合には、管轄裁判所を変更可能である。
議論の中で、そもそも何を争うのかというのが話題となった。AWSでは、停止時間に対するペナルティー等、SLAで細かく定められているため、ビジネス要件を争う余地はなさそうである。論点はかなり絞られてくると思われる。したがって、日本のリセラーにとっては、今回の準拠法は、あくまで保険みたいなものであろうということになった。

次に、Security-JAWSに議論が移った。上記で触れたように、コミュニティ的な活動を通してAWSのサービスを深堀していくことが行われている。AWSの機能・利用方法等を幅広く情報交換することでファンを増やしていくという、非常に有意義な活動となっている。 議論の中で、AWSのCompliance Quick Startの話になり、ポリシー、監査などがこのサービスを使用して簡単にできたり、ポリシーのテンプレート化のサービスなど、クラウド上でのコンプライアンス対応には非常に有意義であることが紹介された。

最後に、AWS、特にセキュリティ対応について、SIerが必須かどうかということが議論となった。AWSのセキュリティサービスは、Security-by-Designについてはよくできているが、WAFの件で触れたように、カスタマが独自に行うには難しい面があるようである。サードパーティーとの連携によるサービス提供ということが、今後も必要になってくるということであった。

以上