セールスフォース、SaaS/PaaSセキュリティ ~ 第4回クラウド利用者会議 

4回クラウド利用者会議 レポート

201612月25
CSAジャパン 諸角昌宏

4回クラウド利用者会議は、セールスフォースから高橋悟史氏、成田泰彦氏に講演していただいた。会議は、1215()に開催し、クラウド利用者を中心として10名に参加いただいた。ここでは、会議の概要について記述する。

セールスフォースからは、SaaSIaaSの違いを中心に説明していただいた。まず、最も重要視しているのがTRUSTということで、実績として今まで一度も情報漏えいやハッカーの侵入を許していないということが挙げられた。信頼というのをどのように見せるかは非常に難しい問題であるが、実績もさることながらセールスフォースのセキュリティに対する取り組みをみると明白であるということができる。また、この大企業レベルで信頼されるシステムをそのまま一般にも提供できているということで、すべての利用者に同じレベルの信頼を与えることができるというクラウドの優位性を示している。このセキュリティを支えているのが、セキュリティ対策に対する技術面への投資だけでなく、人間系への投資、つまりセキュリティの専門家への投資を積極的に進めているということである。これは、単純に専門家の数を増やすということではない。セキュリティの専門家として本当に必要となるスキル、また、開発者に対するセキュリティのトレーニング等をきちんと実施している。

さて、IaaSとの違いという点からセールスフォースを見てみる。

まず、1個のデータベースにすべての顧客データを保存している、いわゆるマルチテナントDBという形を取っている。これを個別のデータベースと比較すると、まず重要なのが、個別DBの場合には管理者が多数必要になるという点である。セキュリティの対応を一人の人間が多く持つようになるとそれだけリスクが増大するし、管理者による違反の可能性も高まってくる。マルチテナントDBでは、物理境界ではなく論理境界をどのように守るかという点が問題となるが、技術的な対策と合わせて人的な対策としての職務の分離(データの操作者とDB管理者の分離など)をおこない、論理境界を技術的/人的の両面からサポートしているということである。なお、これらのセキュリティ対策はアプリケーションサーバ側で対応しており、ユーザのIDとオブジェクトのIDがアプリケーションでしか分からないしくみを取っている。これにより、管理者に対してデータを隠ぺいすることが可能になっている。アプリケーションサーバ側で様々な対応を行うということは、データベースに対するベンダーロックインを回避するという点からも重要であり、ビッグデータ等で使われている様々なデータベースへの対応という観点からも重要になってくる。

次にソフトウエアの観点から見ると、単一ソフトウエア、単一バージョンの本番システムを実現している。常に最新の1つのバージョンのみを提供することで、信頼性および高いセキュリティを提供している。また、システムの状況をホームページですべて公開している。これにより、透明性および稼働性を実現している。監査に関しては、年2回の第三者監査を、立ち入り監査を含めて実施している。また、脆弱性診断を年4回実施しており、かつ、都度、診断に使う業者を変更して行っている。これらの観点から、ソフトウエア/サービスおよびシステムの信頼を提供している。

さて、このようなセールスフォースの信頼に対する取り組みを受けて、利用者とのディスカッションについて以下に述べる。

まず、セールスフォースが信頼性の高いシステムであること、また、高いセキュリティを保っていることは明らかであるが、そのような状況において「利用者側のリスク」というものが何になるかということである。これについては、クライアントのセキュリティはセールスフォースでは対応できないので、利用者側できちんと管理する必要があるということになる。特に、クライアントの乗っ取りについては十分な対策を取る必要がある。

次に、AWSとの連携の話についてのディスカッションになった。セールスフォースは、もともとインフラを自前で提供している。自前で提供することで、サプライチェーンに頼らず独自にセキュリティを維持できるという強みを持っていた。その状況でAWSと連携するようにした理由は、あくまでデータセンターとしてのスピードとコストのためであるとのことであった。特に、IoT、ビッグデータ、AIのように大容量のデータを扱うものについては、AWSのスケーラビリティが必要になってくる。また、セールスフォースが提供する新しいサービスが、もともとAWSで作られているような場合には、そのまま提供するとのことである。そうすると、AWSを使った場合のセキュリティ対策をどうするかということになる。一般的に、IaaSのセキュリティ対策は利用者側の作りこみが求められる。例えば、すでにAWS上でサービスを提供しているファイルフォースでは、暗号化等を含めて独自に実装しているということである。セールスフォースでも、現段階ではAWSのセキュリティサービス機能は使用せずに独自に作りこんでいるということである。今後、どのような形でAWSのセキュリティサービスが利用されていくのかは興味深い点である。

最後に、マイナンバーに対するセールスフォースの対応についてディスカッションとなった。マイナンバーについては、セールスフォースとしては法律の要件を満たすことはできないということを明確にしている。パートナー(PaaS上にアプリを構築している)と利用者の間の契約として、マイナンバーへの対応をどうするかを考えなければならない。クラウドプロバイダとしては対応しきれない日本国内の問題ということになる。これは、前回のクラウド利用者会議で問題となった、EUの個人データをクラウド内で自由に移動できる(セールスフォース、AWSAzureが可能)にもかかわらず、日本国内で保存や検索を行うことができないという点があったように、グローバルに展開しているクラウドに対する日本の問題として見ていく必要がある。

セキュリティに関しては最先端を行くセールスフォースということで、非常に明快な説明をいただき、また、分かりやすいディスカッションを行うことができた。非常に高いセキュリティレベルを維持しながら、セキュリティに関わる人間の数はそれほど多くない(具体的な数字は出ていない)ということで、セキュリティ面でのクラウドの優位性というのを改めて感じることができた。

以上

 

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