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今後のクラウドの動向 ~ 第5回クラウド利用者会議

5回クラウド利用者会議 レポート

2017222
CSAジャパン 諸角昌宏

 5回クラウド利用者会議では、株式会社BCN週刊BCN編集長の畔上文昭氏に講演していただいた。会議は、210()に開催し、クラウド利用者を中心として10名に参加いただいた。ここでは、会議の概要について記述する。
今回は、今までのクラウド利用者会議とはちょっと趣を変え、今後のクラウドの動向に対して、どのように取り組んでいくのかという点を中心に議論を行った。 

まず、畔上氏から、IoTとクラウドの親和性の高さについて説明された。IoTと言えばクラウドということで、以下の5つの理由からIoTではクラウドが必要になっているとのことである:

  • データ量が読めない
  • 拡張性を確保したい
  • 素早く展開したい(特に、グローバルに)
  • チャレンジ領域のインフラとして有効
  • ダメなら撤退が容易

また、IoTとクラウドにより、地方の活性化が図れるとのことである。地方には工場が多く、IoT -> クラウド -> ビッグデータという流れで、地方において有効活用されていくとのことである。

さて、2017年のクラウドマーケットの動向(特にIaaS/PaaS)であるが、まず海外ベンダーの動向というか方向性について以下のようにまとめている。

  • AWS: エンタープライズのクラウド化に関する議論はもはや終了。多くの基幹システムがAWS上で稼働している(SAP HANAのように)状況で、「エンタプライズごとクラウド」という流れを作っている。
  • Azure: デジタルトランスフォーメーションがクラウドの存在を高めるという観点から、企業のデジタル化を推進している。IoTAIで存在感を示している。
  • IBM: コグニティブとクラウドの会社というイメージを作っている。Watsonを始めとする付加価値が大きな競争力となっている。「クラウドネイティブ」でない一般企業の需要に応えるようにしている。
  • Google: ビッグデータ解析、マシンラーニングで差別化を図っている。
  • Oracle: オンプレでのSI技術をそのまま生かせるクラウドということで、価格勝負に向かっている。しかしながら、Oracle自身の中でのクラウド率が低く(グローバルで10%)、なかなか難しい状況となっている。

以上のような状況であるが、AWSAzure2強の状況は崩せないだろうというのが一般的な見方となっている。 

次にAIとクラウドについてであるが、今後AIerというAIをビジネス化するSIerが生まれ、ITのゴールがAIという時代になる。その時、クラウドがAIエンジンを提供する時代になる。また、IoTとクラウドのAI活用が進み、「エンタープライズAIoT」というのが実現される時代になるようである。そのような状況で、AIとクラウドについて考えると、SaaSが面白いということになる。SaaSベンダーは、すでに(これからも)大量のデータを持っており、これをAIに活用することでSaaS自体を便利にしていくことができる。SalesforceEinsteinは、SalesForce自体を使いやすくすることに貢献している。したがって、パッケージベンダーは、SaaSに行かないと乗り遅れることが予測される。

また、RPARobotic Process Automation)のお話があった。いわゆるAIが「人間の代わりになるロボット」を求めているのに対して、RPAは「人の代わりに働くロボット」を作っていくものである。既存のシステムには手を加えずに、操作する人間をロボット化していく。既存のシステムを使うことで、AI化する必要がないし、操作する人間をロボット化することで、いわゆる「自動運転」というものはいらなくなる。人の代わりにロボットが動くことで、人的なエラーがなくなるとともに、圧倒的な速さで処理を行うことができるようになる。 

最後にまとめとして、以下の5点を挙げた。

  • IaaS/PaaSは、各社の戦略が明確化されてきた
  • クラウド2強時代が続く
  • AIoTが実用段階に入ってきた
  • AIoTとのコラボが注目されるRPA
  • 人ロ知能(2つ目の文字は、「くち」ではなく「カタカナのロ」)が来るかも。

クラウドは、単なる基盤の置き換えではなく、新しいITの領域へのデジタルトランスフォーメーションを導くものであるということを、改めて強調された。

さて、畔上氏の講演に続いて会議での議論となった点について以下に記述する。 

まず、クラウド2強時代やIaaS/PaaS各社の戦略の明確化を受けて、国産クラウドが今後どうなっていくのかという点について議論が行われた。結論としては、国産クラウドが、IaaS/PaaS市場で勝負するというのは考えられないということであった。その状況で、国産クラウドがどのようにビジネスを組み立てていくかというと、それはSaaS市場ということになる。国産クラウドとしては、①自社でクラウドインフラも持ちその上にサービスを展開していくか、②AWS/Azure等のクラウドインフラを使ってその上にサービスを提供するか、というどちらかでSaaSビジネスを拡大していく方向に向かっていく。

また、クラウド2強のように欧米のクラウドに依存してしまうことに対するリスクの議論も行われた。ビジネスリスクはある程度やむを得ないとしても、カントリーリスクをどうするのかが問題となる。たとえば、米国の法律に縛られてくる可能性や安全保障上のリスクをどうするかなど、日本として考えていかなければいけない課題が多いということになった。国策を取る必要があるかどうかも含めて、考えなければいけない内容となった。

カントリーリスクという点で、IPAが始めた産業サイバーリスクセンターの議論になった。ここでは、サイバー攻撃を防ぐ人材育成のための新組織を立ち上げ、そのアドバイザーに米国家安全保障局(NSA)のアレキサンダー元局長を迎えた。セキュリティ技術者の養成として、非常に注目される活動である。人材育成と合わせて、武器となるべく国産クラウドや国産セキュリティベンダー等の整備をどうするかも合わせて進めていく必要があるということである。

以上